日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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アントシアニン生合成経路の改変による新花色品種の作出
*田中 良和
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p. S0016

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抄録
植物はアントシアニンの構造(B環の水酸基数や,メチル基・アシル基などによる修飾)、共存する化合物、液胞のpH、金属イオンなどを制御することによりその種に適した多彩な色の花を咲かせている。種によって合成するアントシアニンが遺伝的に決まっているため、たとえば、青や紫のバラ、カーネーション、キク(これらはデルフィニジンを生産しない)、真っ赤なリンドウ、アイリス(これらはペラルゴニジンを生産しない)は存在しない。
花色に大きな影響を与えるB環の水酸基数を決めているのはフラボノイド3’-水酸化酵素とフラボノイド3’, 5’-水酸化酵素である。これらの遺伝子を導入したり、発現を抑制したりすることにより、その植物が生産しないアントシアニンを合成することができる。目的のアントシアニンを蓄積させるためには、適切な宿主を選ぶ、ジヒドロフラボノール4-還元酵素(種により基質特異性が異なる)を共発現する、競合する経路を抑制するなどの工夫が必要であることが多い。デルフィニジンを蓄積し、花色が青く変化したバラ、カーネーションはすでに市販されている。また、ペラルゴニジンを蓄積し、鮮やかな赤い色を呈するペチュニア、タバコも報告されている。花色をもっと自在に変化させるためにはアントシアニンの修飾、液胞のpH制御、金属イオンの取込などを人為的に制御できるようになる必要がある。
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© 2010 日本植物生理学会
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