日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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菌根菌によるリン酸吸収
*畑 信吾
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p. S0039

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抄録
アーバスキュラー菌根(AM)菌は4億年以上も植物と共生してきた真菌類である。AM菌は、外生菌糸によりリン酸をはじめとする無機養分を土壌から吸収して植物に与え、見返りに光合成産物を宿主植物から受けとる。この栄養授受に中心的な役割を果たすのが、AM菌が植物皮層細胞内で形成する樹枝状体であり、それを囲み植物細胞膜と連なるペリアーバスキュラー膜である。私たちはイネとダイズにおける菌根経由の養分吸収機構を研究している。イネゲノムにコードされる菌根誘導型リン酸トランスポーターOsPT11とGFPとの融合タンパク質を自身のプロモーター制御下に発現する形質転換イネを作成し、独自に開発した簡便な装置を用いて生きたままの菌根におけるin planta蛍光を初めて顕微鏡観察した。その結果、OsPT11は樹枝状体近傍のペリアーバスキュラー膜にのみ局在していること、樹枝状体が崩壊するときには非常な短時間のうちに急速な収縮が起こること、樹枝状体の生成や崩壊は細胞自立的に進められることなどが明らかになった。一方、ダイズからは3分子種の菌根誘導型リン酸トランスポーターをコードする植物遺伝子を初めて同定した。そのうちGmPT10, GmPT11は他の植物の菌根誘導型リン酸トランスポーターとよく似ていたが、GmPT7はそれらとは異なる機能も合わせ持つようであった。これらの結果を踏まえて菌根共生の全体像を議論したい。
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© 2010 日本植物生理学会
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