抄録
近年、蛍光プローブを用いたイメージング技術が大きく進展したものの、植物が必要とする明条件下には適用できず、また画像の定量的な解析は極めて困難である。そこで、我々はこれらの問題点を持たないアイソトープイメージングに着目し、市販のβ線放出核種を用いる、リアルタイムイメージング装置を開発したので報告する。マクロ装置では植物の地上部には光を照射し、根は暗い状態となるよう、LEDを取り付けた試料箱を調製した。水耕液に32P-リン酸を添加し、水耕液中の根がどのようにリン酸を吸収し、地上に以降させるかを連続的に可視化させることに成功した。試料から放出されるβ線をシンチレータで光に変換し超高感度DDCカメラで画像として取得した。ダイズの根から吸収されたリン酸はまず、若い組織に選択的に以降すること、葉によっても葉脈に沿って以降する場合と葉脈間に蓄積が起こっている場合があることが判った。またダイズのサヤではサヤの下端にリン酸が蓄積し、サヤ中の種子にはほぼ均等に蓄積していくことが示された。またイネの場合には水耕液のみならず、土壌を通して根にリン酸が吸収されていく動態を可視化することができた。ミクロ装置では、蛍光顕微鏡に放射線測定口を取り付け、蛍光像と同時にβ線像も取得できるようにした。なお、両装置による分解能は今のところ約100μmである。