抄録
リン酸は、植物の必須栄養素の一つだが、自然界において植物が利用できる無機リン酸の存在量は数マイクロMと限られている。そのため、植物は自然界の低リン酸環境に適応するための、様々な機構を発達させてきた。土壌における利用可能なオルト正リン酸を増加させ、取り込み活性を上げ、植物体内での転流を進め、さらに細胞内でのリン酸利用効率を上げるために代謝を変化させるとともに、次世代へのリンの受け渡しを進める。
本発表では、このうち、植物が土壌からリン酸を吸収する場合に、根系の構築をどのように制御しているか、取り入れたリン酸をどのように地上部の各細胞に分配するか、道管系から篩管系への移動の機構はどうなっているか、また、細胞内でどのようにリン酸を各オルガネラに分配するか、次世代へリンを受け渡すためのフィチン酸(イノシトール-6-リン酸)合成・蓄積機構がどのようになっているかについて、我々の研究を中心に主に生体膜の輸送機構に基づいて報告する。