日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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葉肉細胞の分裂・伸長シミュレーション
*矢野 覚士塚谷 裕一
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p. S0048

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抄録
葉の発生過程はつきつめれば、細胞の分裂と伸長、2つの要素に抽象化できる。これら2つのふるまいを理解できれば、葉の形態の制御や多様性、変異体等の理解・評価につながることは明らかである。実際の葉において分裂・伸長活性をみると、発生過程を通して時空間的に、連続的に変化する勾配が存在する。葉の発生研究において、この特性は古くから障壁となっている。たとえば、切片観察等から実験的に得られるデータは細胞数、細胞サイズ等に限られる。ここで、サイズと数は強い相関関係を持つため(分裂するとサイズも減る)2つの活性を独立して推定することができない。また、直接計測するには発生過程を通しての観察が技術的に困難であり、報告例も知る限りない。すなわち分裂活性と伸長活性の変化を定量的に捉えられていないというのが現状である。この問題に対し我々は、Free Dirichlet モデル(Graner and Sawada 1993)をベースにした計算モデルによるアプローチを試みている。計算機上に表現した「切り欠きのある円」のような細胞は、輪郭を変えてサイズ変化をおこすと同時に、周囲の細胞群を移動させる。細胞は分裂が可能であり、2つの娘細胞の輪郭が母細胞の輪郭に近づくように設計した。計算機上では個々の細胞の分裂・伸長活性を独立に変更する事が可能であり、シミュレーションが可能になったので紹介する。
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© 2010 日本植物生理学会
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