日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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共生窒素固定系におけるディフェンシン様ペプチドの役割
*内海 俊樹Van de Velde WillemZehirov GrigorSzatmari Agnes石原 寛信Alunni Benoit九町 健一阿部 美紀子Kereszt AttilaKondorosi EvaMergaert Peter
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p. S0065

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抄録
マメ科植物の根粒細胞内部では、根粒菌はバクテロイドへと分化し、窒素固定に専念している。共生成立の過程では、根粒菌の増殖と遺伝子発現は、宿主植物からの強い制御を受けるものと予想されるが、その機構は不明である。タルウマゴヤシの根粒内部には、NCR (Nodule-specific Cystein-Rich)ペプチド群が存在している。NCRペプチドは、400種を超えるファミリーを構成しており、保存性の高いシグナルペプチドと、4または6システイン残基の位置が保存されている以外は、バリエーションに富む成熟ペプチド部分からなる。この構造的特徴は、抗菌活性のあるディフェンシンとも共通しており、NCRペプチドが根粒菌のバクテロイド化に関与している可能性がある。NCRペプチドは、バクテロイドが存在する細胞に局在していた。組換え、または、合成NCRを培養菌体に添加したところ、分裂能の喪失や多核化など、タルウマゴヤシ根粒のバクテロイドに見られる特徴を誘導するものがあった。シグナルペプチダーゼ遺伝子が変異したタルウマゴヤシdnf1-1では、NCRペプチドがバクテロイドへ到達しておらず、バクテロイド化も観察されなかった。タルウマゴヤシの根粒では、根粒細胞内部に侵入した根粒菌に様々なNCRペプチドが複合的に作用し、バクテロイド化を誘導するものと考えられる。
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© 2010 日本植物生理学会
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