日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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次世代シーケンサーを用いたイネミュータントパネル系統のソマクローナルバリエーションの点変異スペクトラム解析
*宮尾 安藝雄中込 マリコ大沼 貴子山形 晴美金森 裕之伊川 浩司高橋 章松本 隆廣近 洋彦
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p. 0004

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抄録

我々は、イネ内在性レトロトランスポゾンTos17が培養細胞で特異的に活性化することを利用して、これまでに5万系統のTos17挿入変異系統(ミュータントパネル)を作出してきた。これまでに多くの遺伝子破壊系統が得られているが、大規模表現型解析から、ミュータントパネル系統は、Tos17の挿入によらない変異が多く存在することが予想されていた。これらの変異の原因を探るため、次世代シーケンサーを用いてミュータントパネル系統の全ゲノム解析を進めている。昨年度の報告では、独立の2系統に関して、それぞれゲノムの5倍程度の塩基配列を解析し、M1世代に換算して、少なくとも1Mbに1ヶ所は培養によって変異が起こると予想した。今年度は、コンピュータ解析で予想された変異部位をサンガー法で確認し、変異検出の成功割合の算出と塩基置換のスペクトラム解析を行った。スペクトラムは、CからTへのトランジション頻度が低いことを除くと、アラビドプシスの自然突然変異スペクトラムと良く似ていた。CからTへのトランジションは、メチル化シトシンの脱アミノ化で直接チミンになり、修復酵素が介在する段階が存在しない。一方、その他の変異に関しては、塩基が置き換わるまでの中間段階で酵素による修復が起こりうることから、酵素による修復が阻害されているために、CからTへのトランジション以外の変異の相対的比率が上昇したと考えられた。

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© 2011 日本植物生理学会
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