抄録
植物細胞はさまざまなオルガネラによって占められており,その協調した働きが細胞の活動を支えている.これらのオルガネラの研究ではイメージング解析が重要な役割をもつ.とくに近年,ライブイメージング技術の進歩によって,注目するオルガネラを蛍光標識して経時的に撮影することで,各オルガネラの莫大な時系列画像データが収集されつつある.しかし配列情報や発現情報と比較して,オルガネラ画像に対する客観的な解析手法は普及していない.その要因には,可視化対象,撮像条件,観察目的が多岐にわたるというバイオイメージングの多様性が挙げられる.そこで我々は汎用性の高いオルガネラ画像の解析法を目指し,動き解析のターゲットとしてシロイヌナズナの小胞体流動を選び,時系列蛍光像からの速度測定に取り組んできた.その結果,画像を矩形の小領域に分割し,領域ごとにフレーム間での蛍光輝度の相関スペクトルを求めることにより,速度分布を安定的に求めるソフトウェアの作成に至った.そしてさらに,複数のオルガネラを同時に捉えた時系列画像から,各オルガネラの移動速度を求める方法への拡張を進めている.現在,そのために機械学習によるオルガネラの自動分類を介して,一つの画像から各オルガネラが分布する領域を自動推定する工程の開発を行なっている.発表では生体分子の局在解析への応用も踏まえ,開発の状況と展望について報告する.