日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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イネ卵細胞膜上における配偶子融合領域と受精卵の自律的細胞内極性形成
*岡本 龍史佐藤 明子中島 啓介
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p. 0031

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抄録

被子植物では、胚嚢内での配偶子融合(受精)により生じた受精卵が、小さな頂端細胞と大きな基部細胞からなる 2 細胞胚へと不等分裂する。また、受精卵の第一分裂は、植物のボディプランにおける最初の細胞分化過程(頂端-基部軸形成過程)であると考えられている。本発表では、イネ in vitro 受精系を用いた解析により、受精点は受精卵の第一分裂面決定への位置情報として機能していないことが示され、間接的ではあるが、受精卵の細胞内極性形成および卵細胞上の配偶子融合領域についての知見が得られたので報告したい。
まず、in vitro 受精系により作出した受精卵と胚嚢内の受精卵の発達および分裂様式を詳細に比較し、in vitro 受精卵は胚嚢内の受精卵と同様に細胞内極性を形成し、不等分裂することを確認した。次に、精細胞膜を蛍光レクチンで染色したのち、卵細胞と in vitro 受精させることにより受精点を標識した。その後、受精点標識した受精卵を 2 細胞胚へと培養し、受精点と受精卵第一分裂面の位置および距離を観察・測定したところ、受精点と受精卵第一分裂面の位置関係は完全にランダムであった(n=33)。これらの結果は、「受精卵は自律的に細胞内の極性を形成することができる」および「卵細胞上には精細胞が融合するための特定の領域は存在しない」という可能性を示唆している。

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© 2011 日本植物生理学会
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