抄録
相同組換え修復機構を利用したジーンターゲッティング(GT)は、ゲノム上の標的遺伝子を計画的に改変できる技術である。被子植物においては、細胞内に導入された外来DNAのほとんどは非相同末端結合(NHEJ)によりゲノム中にランダム導入されるため、GTの頻度は極めて低い。従ってNHEJを抑制することによりGTの効率は向上できると考えられ、最近、シロイヌナズナにおいてLigIVの発現抑制により、GT効率が向上できることが報告された。
我々は、DNA損傷によるエンドサイクルの誘導が起こらないイネはNHEJ関連因子の発現抑制の効果を評価しやすいと考え、NHEJ経路の主要因子であるKu70/80およびLigIVの発現をRNAi法により抑制させたイネを作出した。これらのイネカルスにGFP恒常的発現カセットおよびルシフェラーゼプロモータートラップ発現カセットを含むレポーターコンストラクトを導入し、経時的にレポーターの発現解析を行った。その結果、外来遺伝子からの初期の一過的発現はコントロールおよびNHEJ抑制カルスにおいて違いは認められなかったが、ゲノムに挿入された後の安定的な発現はNHEJ抑制カルスで著しく減少した。そこで現在、分子内相同組換え効率をレポーター遺伝子の発現により可視化できるシステムをイネにおいて構築し、NHEJの抑制がHR効率に及ぼす影響を検討している。