日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

イネ低温障害において、ジベレリンは耐性的な役割を担う
*津長 雄太阪田 忠松岡 信川岸 万紀子渡辺 正夫東谷 篤志
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0041

詳細
抄録

低温や高温の温度ストレスによって、植物の稔性は低下することが知られている。その際、雌性より雄性の花粉の形成がより影響を受けやすく、イネにおいては低温障害による雄性不稔の現象が有名である。本研究では、イネ低温障害における植物ホルモンジベレリンが果たす役割を明らかにすることを目的として、遺伝学的な解析を中心に行った。今回実施した低温処理は、27℃昼/22℃夜 12時間日長のファイトトロン内で、播種後30日目から出穂期まで21.5℃の低温深水処理を行った。その結果、それぞれの親系統(野生型)においては花粉数の低下が観察されたが、ジベレリンの感受性が低下した変異体gid1-8、slr1-d1、-d2、-d3、-d4のいずれにおいても、それぞれその親株以上に葯の発育不良と充実花粉がほとんど見られない著しい減少が認められた。同様に低温環境で栽培したジベレリン生合成系のSD1遺伝子を欠失させたコシヒカリsd1(つくば1号)も親株コシヒカリと比較して、低温による充実花粉数の減少がより顕著に観察された。一方、雌蕊の発達においては、今回の低温処理の条件下では、いずれの変異体においても影響は観察されなかった。以上の結果から、ジベレリンとそのシグナル伝達系が、葯の発達時の低温障害に対して耐性を付与している可能性が強く示唆された。

著者関連情報
© 2011 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top