抄録
根は水分の多い領域へ伸長する水分屈性を示す。水分屈性は、植物の水獲得に重要な役割を果たすと考えられるが、その制御機構はまだよく分かっていない。我々は、水分屈性に必須な遺伝子としてMIZ1を同定し、その発現制御が光によって行われることを見出してきた。今回、MIZ1がHY5を介して制御されること、また光シグナル非依存的にABAによっても誘導されることを明らかにしたので報告する。GFP融合MIZ1を発現する系統を作出し、その発現を光シグナルの感受・伝達異常突然変異体を用いて解析したところ、hy5ではMIZ1-GFPのシグナルが低下していた。一方、光受容体の単一変異体ではMIZ1-GFPシグナルに野生型との変化は見られなかった。また、ABA処理はMIZ1の発現を誘導すること、HY5はABAシグナルの伝達にも関与することが知られている。そこで、ABAにより誘導されるMIZ1がHY5により制御されるかどうか検証した。その結果、hy5にABAを処理したところ、野生型と同様のMIZ1-GFPのシグナルが検出されることが分かった。以上の結果より、ABAを介したMIZ1の発現誘導には、HY5を介した経路は必須でないことが示唆された。また、hy5では水分屈性が低下し、ABA処理によりその低下が回復したことから、光、乾燥といった環境刺激により制御されるMIZ1発現量が水分屈性能を調節することが示唆された。