抄録
シロイヌナズナの側根は発生後しばらく傾斜した方向へ伸長するが、その後下方へ伸長する。突然変異体hy5でこの転換が遅れていることに着目し、側根の伸長方向の制御に関わる遺伝子を探索した。ABAを含む培地でhy5を育てると側根の伸長方向の下方への転換が早まったため、ABA誘導性遺伝子の関与が疑われた。T-DNA挿入変異体を探索したところ、rd29aで側根の伸長方向の下方への転換が遅れていた。さらに、RD29Aの根端での発現を定量したところ、hy5で減少していた。従って、RD29Aが根端において伸長方向の転換を早める機能を持つことが明らかになった。また、hy5と野生型について、側根を根の長さと伸長方向により成長段階を分類し、主根とともに採取してマイクロアレイ解析を行った。発現の増大または減少と遺伝型および根の成長段階との対応を調べたところ、根の伸長方向に関わらず遺伝型に対応している遺伝子が最も多く、次に遺伝型に関わらず根の伸長方向と対応している遺伝子が多かった。伸長方向の転換は根端における遺伝子発現の広範な変化の反映のひとつと考えられる。そこで、発現の増大または減少と根の伸長方向が対応している遺伝子のうち、対応の有意確率に基づいてT-DNA挿入変異体の入手可能な28遺伝子を選んで表現型を解析したところ、うち数遺伝子が側根の伸長方向を制御する機能を持っていた。