抄録
細胞周期のM期の開始や進行は、M期サイクリンの発現レベルにより制御されている。そして、これらのサイクリンの発現量は、細胞周期依存的な転写とタンパク質分解という2つの主要な段階により調節される。これまでのシロイヌナズナを用いた研究から、CYCA1, CYCB1およびCYCB2などのM期サイクリン遺伝子の転写には、R1R2R3型のMyb転写因子群が重要な働きを担っていることを明らかにしてきた。R1R2R3-Mybの一つ、MYB3R4の遺伝子破壊株をもとにしたエンハンサー変異体の解析から、M期サイクリンのタンパク質分解制御に関わると考えられる新奇因子を同定したので報告する。スクリーニングの過程で得られた変異体の一つ、gigas cell1 (gig1)変異体の葉には、巨大な孔辺細胞様の細胞が生じる。この異常な細胞は、複数の孔辺細胞マーカーを発現しており、また染色体数が倍加していることから、孔辺細胞の発生過程における細胞分裂で、M期後期に異常が起きることにより生じたものと考えられた。GIG1遺伝子の過剰発現体は、サイクリンのユビキチン化を担っている後期促進複合体(APC)のノックダウン株に酷似した表現型を示すことなどから、GIG1はAPCの抑制タンパク質である可能性が考えられる。現在、gig1とAPCとの間の遺伝学的な関連について解析を行っており、この結果についても合わせて報告する。