抄録
植物細胞では、表層微小管が細胞の伸長方向決定に重要であることが知られている。これまでに、我々は微小管重合阻害剤であるpropyzamideに高感受性を示す変異体phs1-1(propyzamide hypersensitive 1)を単離した。phs1-1では微小管の配向に異常が生じ、根の伸長方向にも異常が生じる。PHS1は、kinase-like domainおよびphosphatase domainをもつタンパク質をコードしていることから、リン酸化経路が微小管を制御していることが予想された。そこでPHS1のどの領域が微小管制御に重要かを解析するために、PHS1を断片化したさまざまなコンストラクトを作成し、微小管を可視化したシロイヌナズナ表皮細胞に一過的発現させた。この実験により、kinase-like domainは表層微小管を強く脱重合すること、kinase-like domainの微小管脱重合能はphosphatase domainによって抑えられ、抑制にはそのphosphatase活性が重要であることが示された。以上の結果から、PHS1はkinase-like domainによって微小管脱重合を促進するが、その活性は自身のphosphatase活性によって抑制されると考えられる。