抄録
私たちは、重力と光という異なる環境刺激に対して過剰な屈性応答を示すシロイヌナズナのミオシン二重変異体の解析を行ってきた。昨年の年会では、この変異体が胚軸と根だけでなく花茎においても過剰な重力屈性を示すこと、私たちが注目しているミオシン遺伝子XI-Fのプロモーター活性が花茎内部で強いこと、そしてそこでの原形質流動がこの変異体において著しく抑制されていることを発表した。その結果から、ミオシンXI-Fが駆動する組織内部における原形質流動が屈性応答の適切な調節に重要な役割を果たしていると私たちは考えている。XI-Fの高発現部位は師部であるが、どの細胞かまでは明らかにできていなかったため、様々な方法を用いてXI-Fの発現部位の特定を試みた。師部の細胞が屈性応答に関わっているという報告は数少なく、その細胞が屈性応答にどんな働きをしているかを、先行研究の知見と本研究の結果を交えて考察する。加えて、その細胞におけるアクチン骨格の観察を行い、ミオシンの欠損がアクチン骨格に与える影響を調べ、表皮細胞においてミオシンがアクチン骨格の形成に関わるというモデル(Ueda et al., 2010)が今回着目している細胞にも適用できるかを検証した。以上の結果から、表皮と師部におけるミオシンの細胞内機能を比較し、ミオシンがどのように屈性応答を制御しているかに迫りたい。