抄録
蛍光イメージングの発展により、目的のタンパク質の局在や発現部位、オルガネラの動態を容易に観察できるようになった。しかし、蛍光レベルではオルガネラの微細構造情報は得られないため、透過型電子顕微鏡(TEM)による超微形態観察が不可欠である。また、網羅的な解析が発展し、様々なデータベースが整備されつつあるが、それら情報を位置づける細胞やオルガネラレベルの網羅的な解析はほとんど進んでいない。そこで我々は、オルガネラ超微形態情報を含む高精細・広領域TEM像とオミックス情報の融合を目指している。高圧凍結技法によりシロイヌナズナ芽生えの茎頂および根端を凍結固定・樹脂包埋後、広域超薄切片を作製し、常法によりTEM観察した。その際、輸送小胞が識別可能な倍率で根端全体が収まるよう網羅的に撮影した。そして、それらのTEM写真を結合し電子地図化後、写真上のオルガネラに位置情報を加え、検索を可能とした。輸送系オルガネラの分布や超微形態を解析した結果、根端組織にはER ボディや高電子密度小胞(DV)が多く観られたが、トランスゴルジ網(TGN)や分泌小胞塊(SVC)などの小胞クラスターは少ないことがわかった。一方、茎頂組織にはERボディやDVはほとんど観られず、TGNやSVCが多く存在することがわかった。高精細・広領域TEM像の電子地図化により、組織ごとに輸送系オルガネラが分化していること示唆された。