抄録
我々はこれまでに、シロイヌナズナの花成が膜脂質のリノレン酸 (18:3) によって抑制されることを見出した。野生型 (Col-0)を低温 (15℃)で生育させると、22℃の場合と比べて18:3含量が増加し遅咲きとなるが、18:3の合成酵素が欠損したfad3 fad7 fad8 三重変異体は低温による花成の遅延が軽減されたことから、低温による花成の遅延は18:3に起因することが考えられた。また、花成決定因子APETALA1(AP1) を高発現させた35S-AP1 植物は早咲きであるが、その表現型は低温で抑制され、さらに18:3含量を高めた35S-FAD3 植物との交配によっても抑制されたことから、18:3がAP1 による花成の決定に影響することが考えられた。そこで本研究では、35S-AP1-GFP を18:3含量の異なる植物に導入して、18:3によるAP1の細胞内局在性の制御について解析したので報告する。