抄録
ヤトロファは種子に30-40%程度の油脂を含有し、耐乾性に優れ荒廃地でも生育可能である。本植物は食糧作物との耕作地の競合を回避できるなどの利点があり、次世代のバイオディーゼル原料の主力の一つとして注目されている。一方、その果実登熟段階における脂質生合成の分子制御機構の全体像については全く判明していない。そこで本研究では、果実登熟過程における脂質蓄積と脂質関連遺伝子の発現プロファイルを網羅的に解析し、その分子制御機構について基盤情報を収集した。インドネシアで栽培されたヤトロファを用い、その開花直後から成熟に至までの果実の各成熟段階における脂質含量および組成の変化を解析した。あわせて同段階における網羅的な遺伝子発現解析を次世代シーケンサーおよび定量的RT-PCRにより行い、脂質代謝に関わる遺伝子群の発現情報を取得した。その結果、ヤトロファの特定の成熟段階で脂質代謝遺伝子群が発現上昇すること、それに合わせて種子脂質量が急速に増大し、脂質組成も大きく変化することが明らかになった。これらの結果は、ヤトロファの脂質生合成過程において大規模な代謝制御が存在することを示唆している。