抄録
小胞体で前駆体として合成された種子貯蔵タンパク質は,小胞輸送によりタンパク質蓄積型液胞に運ばれた後,プロセシングを受けて成熟型になる.私達は貯蔵タンパク質前駆体を種子に異常蓄積するシロイヌナズナmaigo変異体を単離し,液胞タンパク質の細胞内輸送機構を解析してきた(1).新規の変異体であるmag5変異体の種子細胞には,電子密度の高いコアを含む,直径約 500 nmの構造体が多数蓄積していた.これらの構造体は,小胞体内に貯蔵タンパク質が異常蓄積することによってできるMAG bodyであると判明した.同定したMAG5遺伝子は,約150 kDaのタンパク質をコードしていたが,予測される機能ドメインをもっておらず,機能未知であった.シロイヌナズナゲノムには,MAG5遺伝子のホモログが1つ存在しており,これをMAG5-like遺伝子と名付けた.mag5変異体とは異なって,mag5-like変異体の種子に貯蔵タンパク質前駆体は蓄積していなかった.MAG bodyを異常に蓄積する既知の輸送変異体の原因遺伝子はすべて,小胞体―ゴルジ体間の輸送に関わる因子である.MAG5遺伝子も小胞体―ゴルジ体間の輸送に関わっていることが示唆される.
(1)Takahashi H. et.al, Plant Cell Physiol 2010;51(10):1777-1787.