抄録
シロイヌナズナにおけるセリン-アルギニンリッチ(SR)タンパク質ファミリーの中で、植物特有のドメイン構造を有するatSR45aはスプライセオソーム構成因子として機能し、強光ストレスにより迅速に発現誘導される(Plant Mol Biol 70:241-5,2009)。したがって、atSR45aは強光ストレスに応答した選択的スプライシング制御に重要な役割を果たしていることが示唆される。そこで本研究では、atSR45a遺伝子破壊株(KO-sr45a)を用いたタイリングアレイ解析により、atSR45aによりスプライシング効率を制御される遺伝子群の同定を試みた。
タイリングアレイ解析の結果、強光ストレス下(800 μmol/m2/s, 1 h)においてKO-sr45a株では、235箇所のコーディング領域の発現量が野性株と比較して有意に変化していた。半定量的RT-PCRによる検証の結果、強光ストレス下における選択的スプライシング効率および転写レベルの変化が、各々9個および6個の遺伝子において認められた。また、それらの強光ストレス下での選択的スプライシング効率の変化は、atSR45aの発現誘導のタイミングと一致していた。さらに、選択的スプライシング産物のシークエンス解析の結果から、atSR45aはイントロンリテンション型のスプライシングエンハンサーとして機能していることが示唆された。