抄録
ミヤコグサNIN遺伝子は根粒形成過程で多面的に機能しており、nin変異体は根粒菌の感染による根毛カーリングの異常、感染糸形成不全、根粒原基形成不全といった表現型を示す。我々はNINの発現が感染糸形成及び皮層細胞分裂を誘導することを明らかにしており、根粒形成過程を制御する鍵因子の一つであることを示した。しかし、NINタンパク質の機能、NINがこれらの現象を誘導する分子機構は分かっていない。NINは構造的に転写因子として機能すると予測される。そこで、GAL4 DNA結合ドメインとNINの融合タンパク質をタバコで発現させたところ、GAL4結合領域をプロモーターに持つレポーター遺伝子の発現を誘導した。この結果より、NINは転写活性化因子として機能すると考えられた。さらに、ミヤコグサ・トランスクリプトームデータベースから、NIN依存的に根粒菌接種によって誘導される遺伝子を探索し、19遺伝子をNIN標的遺伝子の候補とした。これらがNINの直接的な標的遺伝子であることをChIPアッセイ、EMSAなどで解析を行い、少なくとも2つの候補遺伝子についてはNINがプロモーターに結合することを明らかにした。また、DEX誘導型NINを導入したミヤコグサの根では、DEX依存的にこれらの遺伝子の発現が誘導された。さらに、これらのコードするタンパク質の機能解析も行っておりこの結果についても報告したい。