抄録
植物の環境ストレス応答に関わる新規マスター転写因子を単離することを目的に、乾燥ストレス処理シロイヌナズナのマイクロアレイデータを用いて、共発現解析を行った。その結果、120個の共発現遺伝子グループが検出された。これらのグループの中で、乾燥ストレスに応答して特徴的に変動するグループに注目し、そのグループに属する遺伝子のプロモーター解析を行った。その一つに、乾燥ストレスに応答して抑制される遺伝子が共発現するグループが存在した。それらの遺伝子のプロモーター上には有意に共通のモチーフGGNCCCが検出された。このモチーフは腋芽形成や種子成熟に関与する遺伝子のプロモーター上に有意に存在することが既に報告されており、植物特異的な転写因子TCPの結合配列であることが明らかになっている。乾燥ストレス下でのTCP遺伝子群の発現解析を行った結果、TCP遺伝子の一つは顕著な乾燥ストレス誘導性の発現パターンを示した。現在、ストレス誘導性のTCP遺伝子の分子機能や下流因子に関して解析しており、TCPが関わるストレス応答機構について考察する。