日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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傷害応答におけるシロイヌナズナMAPキナーゼMPK3とMPK6の機能の解析
*小林 光智衣森下 宜彦鈴木 秀幸光原 一朗大橋 祐子柴田 大輔瀬尾 茂美
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p. 0155

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抄録
MAPキナーゼ(MAPK)カスケードは様々な生理機能の制御に関わるシグナル伝達経路であり、植物を含む高等生物に広く保存されている。構成因子の一つであるMAPKは刺激に応じて活性化され、転写因子等の基質の活性化を通して生理機能の制御に関わっている。傷害に対して植物はシグナル物質であるジャスモン酸(JA)やエチレン(ET)の生産を高めることで対処することが知られている。演者らや他の研究グループのタバコやトマトを用いた解析により、傷害に応じたJA生成はMAPKであるWIPKとSIPKが、ET生成は主にSIPKが正の制御因子として機能することが明らかとなっている。今回、傷害応答におけるWIPKとSIPKの上記機能が植物全般に保存されたMAPKの機能であるか否かを検証するために、シロイヌナズナの対応するMAPKの単独欠損体であるmpk3mpk6、及び、両遺伝子の発現を抑制したRNAi植物体(MPK3/MPK6二重抑制体)を用いて傷害応答を解析した。傷害後のET生成はSIPKに対応するMPK6が主体となって制御していた。一方、JAの生成はMPK3/MPK6二重抑制体においても野生型と同程度であったことから、タバコ等ナス科植物とは一部異なる制御機構であると考えられた。メタボローム解析による傷処理後の野生型植物とMPK3/MPK6二重抑制体間の生体内代謝産物の比較調査の結果も併せて報告する。
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© 2011 日本植物生理学会
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