抄録
植物のプロテアーゼインヒビター(PI)は、草食動物による食害に対する防御応答の一部として機能し、植物の食害抵抗性に重要である。トマト(Solanum lycopersicum)ゲノムにはPI遺伝子が多数存在するが、これらのうち食害応答性が示されているのは少数である。またこれら遺伝子の発現制御に直接関わる転写因子は明らかにされていない。そこで我々は、種々のマイクロアレイデータにおいて共発現をすることが明らかになっているPI群と転写因子に着目して解析を行った。このPI群はkunitzタイプとpotato protease inhibitorタイプに大別され、kunitzタイプの1種に関してはジャスモン酸によって発現の誘導がおこることが報告されている。メチルジャスモン酸(Me-JA)処理時の葉における発現解析を行ったところ、いずれのPIも発現が誘導され、また互いの発現相関が高かったことから、PI群の発現は食害に対して応答している可能性が示唆された。一方、これらPI群の共発現モジュールに含まれるMYB転写因子とTCP転写因子に関しても同様の解析を行ったが、Me-JAへの発現応答は見られなかった。また35S プロモーターによるMYB過剰発現トマトを作製したが、PI発現への影響は見られなかった。これらの結果から、共発現する転写因子のPI群発現における関与は弱いと考えられる。