抄録
MAPキナーゼは様々な細胞外刺激への応答において中心的な役割を果たす情報伝達因子である。タバコにおいては、二つの病傷害応答性MAPキナーゼであるWIPKとSIPKがストレスに応答したジャスモン酸とサリチル酸の蓄積を制御する。MAPキナーゼ脱リン酸化酵素はMAPキナーゼの抑制因子である。我々は、タバコのカルモジュリン結合性MAPキナーゼ脱リン酸化酵素・NtMKP1を過剰発現すると、WIPKとSIPKの傷害による活性化が抑制されることを報告してきた。本研究では、傷害に応答したNtMKP1の転写レベルおよびタンパク質レベルの変動について解析した。定量的RT-PCRの結果より、NtMKP1のmRNAレベルは傷害後一次的に減少し、その後に増加することが明らかになった。NtMKP1のタンパク質レベルを免疫ブロットにより解析したが、野生型植物においては検出されなかった。そこで、NtMKP1をカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター制御下で発現する形質転換体を用いた。NtMKP1タンパク質のレベルは傷害後急速に減少し、数時間低いレベルを保った後、基底のレベルに戻った。これらの結果より、NtMKP1は転写レベルおよび転写後レベルで制御されていることが明らかになった。