抄録
珪藻のアンテナタンパク質は、fucoxanthin chlorophyll a/c binding protein (FCP)である。高等植物や緑藻タイプのアンテナタンパク質(LHC)に比べ、珪藻のFCPに関する生化学的な研究は多くない。近年、LHCIやLHCIIのように、PSIやPSIIに特異的なFCPが存在しているのかどうか議論となっており、PSI特異的なFCPの存在は示唆されているが、PSIIに特異的なFCPに関する知見はない。
我々は、生化学材料としてよく使われている珪藻Chaetoceros gracilis (UTEX LB 2658)から酸素発生能を持つ光化学系II複合体の粗標品(crude PSII)の単離に成功した。このcrude PSIIには、FCPが含まれていた。本研究では、crude PSIIを材料としPSIIに特異的なFCPの単離と解析を目的とした。調製したcrude PSIIをTriton X-100で処理し、ショ糖密度勾配遠心によって、ペプチド組成の異なるFCPを単離することに成功した。現在、これらの標品の分光解析や色素組成の分析を行っているので、これらの結果を合わせてPSIIに特異的なFCPの特性を議論する予定である。