日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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雄の自家不和合性遺伝子SCR/SP11の変異によるシロイヌナズナの自家和合性の進化
*清水 健太郎土松 隆司諏訪部 圭太清水(稲継) 理恵磯川 さちよPavlidis PavlosStaedler Thomas鈴木 剛高山 誠司渡辺 正夫
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p. 0190

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抄録
自家和合性の進化は,被子植物でもっとも普遍的に見られる進化的な変化の一つである.アブラナ科の自家不和合性はS遺伝子座の雌の遺伝子(SRK)と雄の遺伝子(SCR/SP11)と,その他多数の修飾遺伝子によって成り立っている.モデル生物シロイヌナズナがどの変異によって自家和合性に進化したのかを調べるため、ヨーロッパの76アクセッション(エコタイプ)の S遺伝子座領域の配列を決定し、297アクセッションのジェノタイピングを行った。その結果、SCRの213 bpの逆位型変異がヨーロッパに広がっていることを見出した.一方、Wei-1などのアクセッションは全長のSRKを持っており、同じハプロタイプを持つ近縁種ハクサンハタザオとの交配から,シロイヌナズナの雌の自家不和合性が未だに機能的であることが示された.また,SCRの逆位型変異を元に戻したトランスジェニックWei-1植物は自家不和合性となった.これらの結果から,SCR以外の因子はまだ正常に機能しており,SCRの213 bpの逆位型変異がシロイヌナズナの自家和合性への進化をもたらしたことが示された.またこの変異は,氷河期と間氷期のサイクルの中で急速に生息地を拡大する際に広まったことが示唆され,ダーウィンの繁殖保証仮説が支持された.雄の因子への変異は送粉昆虫のおかげで広まりやすいという進化学的上の理論を裏付ける結果ともなった.
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© 2011 日本植物生理学会
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