抄録
FLOWERING LOCUS T (FT )遺伝子は約20 kDaのタンパク質をコードする。近年の研究から、このFTタンパク質が長距離移動シグナルとして作用することにより、植物の花成が誘導されることが明らかになっている。また、イネやポプラ、ドイツトウヒ、ジャガイモ、トマトといったシロイヌナズナ以外の植物においてFT 遺伝子のホモログが、分げつ形成や休眠、塊茎形成、複葉の形成などのさまざまな生理過程、特に分裂組織の関わる過程に働きを持つことが分かりつつある。
本研究では、シロイヌナズナにおける花成以外の生理過程のひとつである側枝の伸長に注目し、花成後の野生型とft 変異体の側枝の伸長を解析し、野生型に比べてft 変異体では側枝の伸長開始の遅延および伸長速度の低下があることを見出した。現在、野生型の側枝とft 変異体の側枝について、ホルモン合成・シグナル伝達関連遺伝子や細胞壁関連遺伝子などの遺伝子の発現解析を行っており、その結果も合わせて報告する予定である。