抄録
植物の茎頂分裂組織(SAM)は絶えず細胞分裂を行い地上部の組織を生み出しているにも関わらず、時空間的に高度に秩序だった振舞いを示す。 SAMの分子機構の研究は非常に進んでおり、例えばSAMの維持に中心的に関わっているWUS-CLV相互制御関係が明らかになっている。 しかしながら未だにSAMのダイナミックで秩序だった振舞いが必ずしも理解できている訳ではない。 それを理解するためには、SAMをシステムもしくはダイナミクスとして解析することが避けられない。 そこで我々は数理生物学的な解析による理解を試みた。 我々の用いた数理モデルの設定条件は、WUS-CLV相互作用(反応拡散系)、二次元的なパターン形成、細胞分裂による空間拡張、およびCZによるPZ誘導、の4つである。 まずモデルにおいて出現する全てのパターンを網羅的に調べた。その結果6種類のSAMパターン群に落ちることを示し、その出現条件の詳細を明らかにした。さらにこの結果を、シロイヌナズナ等における観察結果との整合性を検証し、ほとんどすべてを矛盾なく説明できることを明らかにした。 以上の解析の結果、SAMダイナミクスは2つのパラメータ、stem cell proliferation mode(パターン増殖モード)とstem cell containment (空間制約の強さ)、により本質的に理解できると結論した。