抄録
シロイヌナズナのDof転写因子のひとつであるDof5.8は葉の前維管束細胞で発現する。我々は以前に前維管束における発現はオーキシンとオーキシン応答に関わる転写因子MONOPTEROS (MP/ARF5)によって制御されていることを報告した。今回はDof5.8の機能について新たな知見が得られたので報告する。プロトプラストにおいてDof5.8を発現させると、MPによる自身のプロモーターの活性化を強く抑制した。さらにDof5.8にVP16転写活性化ドメインを融合させた場合でも同様の抑制が見られたことから、Dof5.8は転写の抑制因子として働き、かつ自身の発現を負に制御する可能性が示唆された。そこで、Dof5.8の植物体での機能を調べるためにDof5.8を前維管束で過剰発現する植物を作成したところ、この過剰発現体では内在性Dof5.8のmRNAレベルが低下しており、また、ChIP解析によってDof5.8が自身のプロモーター配列に結合していることが明らかとなった。この過剰発現体では葉が細くなり、二次維管束上部と高次維管束の形成が阻害されていた。Dof5.8にSUPERMANの転写抑制領域を付加したタンパク質を過剰発現させた場合にも同様の表現型が見られた。これらのことから、Dof5.8は前維管束において転写の抑制因子として働き、維管束形成を抑制することが示された。