抄録
グルタチオンは、植物においては除草剤を抱合して液胞に隔離することが知られているものの、グルタチオンによって抱合される内在性の物質についてはほとんど知られていなかった。これらを同定するために、液胞でグルタチオン抱合体を分解できないシロイヌナズナ変異株γ-glutamyl transpeptidase (ggt) 4の代謝産物を、野生型株と網羅的に比較した。以前にリョクトウのファイトアレキシンがin vitroでグルタチオンと結合したという報告(Li et al. 1997)や、病原菌感染によって蓄積する過酸化脂質がin vivoでグルタチオンと結合しているという報告 (Mueller et al. 2008) があることから、ggt4変異株及び野生型株には病原菌を感染させた。グルタチオン抱合体は通常水溶性であることから、メタボロミクス解析にはCE-TOF/MSを用いた。
ggt4変異株において蓄積していた物質のひとつは12-oxo-phytodienoic acid (OPDA)-GSH抱合体であることを、標品を合成して確認した。OPDAはジャスモン酸の前駆体である。OPDAは病原菌感染によって増加したが、OPDA-GSHもそれに伴い増加した。これらの結果は、OPDAの一部がGSH抱合体という形態で液胞に輸送されていることを示している。