抄録
近年シロイヌナズナにおいて、原形質流動に関与するミオシンXIのノックアウトが、成長を抑制することが明らかになっている。ミオシンXIの運動活性が植物の成長に関与することが示唆されるが、従来的方法では、分子メカニズムの解明は限定的である。そこで、シロイヌナズナミオシンXIのモータードメインを、生物界最速のモータータンパク質であるシャジクモミオシンのものと置換することで、高速キメラミオシンXIを作製し、ミオシン速度改変が細胞や個体へ及ぼす影響を見ることで、原形質流動と植物成長の関係を統合的に理解しうる新規解析系を構築した。
高速化には原形質流動に関与し組織全体で発現が見られるミオシンXI-2を使用した。In vitro motility assayにより、キメラXI-2は、野生型XI-2(7μm/sec)に対し、約2.3倍の速度(16μm/sec)を発生することが分かった。GFP融合キメラミオシンをシロイヌナズナ培養細胞で発現させた結果、キメラXI-2は膜構造上に局在し、原形質流動の2倍近い運動速度を発生すると共に、局所的に凝集や展開を行う様子が観察された。XI-2のノックアウト株に、高速キメラXI-2をNative-promoterで発現させたところ、野生型XI-2に比べ、根や根毛、葉において成長の促進が見られた。植物成長におけるミオシン運動速度の関与を議論する。