抄録
ゴルジ体は、真核生物の細胞において、新規に合成されたタンパク質を小胞体から受け取り、いくつもの細胞内輸送経路へと仕分けして送り出す重要なオルガネラである。一般的に扁平な袋状の膜(槽)が複数重なった構造(層板構造)をとることが知られており、哺乳類の細胞ではこのゴルジ層板が中心体付近に集められ、互いにつながり合って巨大で複雑なリボン状構造をとる。これに対して植物細胞では、個々の層板構造が独立して細胞質中に散在しているため、層板構造の解析に非常に適している。本研究では、植物のゴルジ体層板構造の形成・維持機構をライブイメージングにより明らかにするため、シス槽とトランス槽を別の色の蛍光タンパク質によって同時に可視化したタバコBY-2ラインを作出した。小胞体-ゴルジ体間輸送を阻害する薬剤であるBFAでこのラインを処理すると、シス槽マーカーの中に、もとのゴルジ体より小さく数の多いドット状の構造体に局在するものがあることがわかった。また、この状態からBFAを取り除くと、シス槽マーカーのドット状の構造体をもとにしてゴルジ体層板構造が再形成される様子が観察された。そこで、このドット状の構造体がゴルジ体再形成の“種”として働いていると考え、その正体を明らかにする解析を進めている。本大会では,植物細胞のゴルジ体の、シス槽とトランス槽それぞれに着目したbiogenesisの機構について議論したい。