日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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トランス作用性small RNAによるアブラナ科植物自家不和合性における優劣性の制御
*樽谷 芳明柴 博史岩野 恵柿崎 智博鈴木 剛渡辺 正夫磯貝 彰高山 誠司
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p. 0236

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抄録
多くの植物は、受粉から受精に至る生殖過程において、自己と非自己の花粉を識別し、自殖を抑制する自家不和合性と呼ばれる性質を持つ。S遺伝子座上にコードされる多型性の花粉因子S-locus protein 11 (SP11/SCR)と、雌ずい因子S-receptor kinase (SRK)を介して行われており、受粉の際、同じSハプロタイプのSP11がSRKに出会うとSRKが活性化され、不和合反応が誘起される。花粉因子SP11は、花粉(n)ではなく葯タペート組織(2n)で作られる花粉の成熟に伴って花粉表層に移行する。従って、2種類のSハプロタイプを持つヘテロ株の花粉は、花粉親の2種類のSハプロタイプの形質を併せ持つが(共優性)、Sハプロタイプの組合せによっては、優劣の関係が生じ、片側のSハプロタイプの形質しか示さない花粉が作られる場合がある。これまでの研究から、優性/劣性ヘテロ株において、劣性側のSP11遺伝子プロモーター領域が、その発現が始まる直前に葯タペート組織特異的にメチル化され、発現が抑制されることが明らかとなっている。今回、我々は、劣性側のSP11遺伝子プロモーター領域の特異的なメチル化が、優性側のSP11遺伝子近傍から産出されるトランス作用性のsmall RNAによって制御されていることを明らかにしたので報告する。
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© 2011 日本植物生理学会
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