抄録
マグネシウム(Mg)は多量必須元素であり、輸送体が報告されているが、そのホメオスタシス機構については不明な点が多い。本研究では、Mg欠乏応答に異常がある変異株の単離を目指して、スクリーニング方法の検討を行った。
まず始めに、Mg欠乏症状が出せる条件を検討した。寒天培地でシロイヌナズナを栽培したところ、地上部のMg量は欠乏条件で低下したが、表現型に変化は見られなかった。そこで、水耕栽培により欠乏処理を行ったところ、培地のMg濃度が50 μM以下になると欠乏症状が見られた。すなわち、寒天培地にはシロイヌナズナの生育に十分量のMgが含まれており、見た目の表現型を指標としたスクリーニングに寒天は適さないと考えられる。
そこで、Mg欠乏応答性遺伝子の発現を指標としたスクリーニング方法の確立を行った。まず、水耕栽培した地上部のマイクロアレイ解析を行い、Mg欠乏で誘導される遺伝子を同定した。次に、これら遺伝子の発現をMgホメオスタシスに関与しているMg輸送体の破壊株mrs2-7と野生型株で比較した。調べたいずれの遺伝子の発現は野生型株よりmrs2-7で高く、これら遺伝子の発現がスクリーニングに利用できると判断した。現在、応答性遺伝子のプロモーターにルシフェラーゼ遺伝子を連結したコンストラクトをシロイヌナズナに導入し、Mgに応答した発光を示すか確認している。