抄録
マグネシウム(Mg)は、植物にとって必要不可欠な元素であるが、恒常性、吸収、移行等に関する知見は非常に少ない。Mg研究が遅れている要因のひとつとして、利用しやすい放射性同位元素が存在しないことが挙げられる。Mgには2種類の半減期の短い核種が存在する。このうち本研究では、キャリアーフリーでの製造が可能な28Mgに着目した。28Mgは半減期約21時間のβ崩壊核種であるが、28Mgを製造し供給する施設は日本国内には存在せず、また世界でも製造している施設は存在していない。そこで、かつて製造した経験のある東北大学のサイクロトロンを用い28Mgを調整した。東北大学CYRICのサイクロトロンでα線を加速し、アルミニウム箔を照射し、27Al(α,3p)28Mg反応により28Mgを製造した。照射後、アルミニウム箔を塩酸で溶解し、2回のイオン交換カラム等で精製して28Mgのトレーサー溶液とした。調製した28Mgはただちに東京大学へ移送し、植物への吸収実験に供した。播種後約3週間目で第6本葉してきた時期のイネに28Mgを吸収させ、イメージングプレートで28Mgの分布を解析した。その結果、最新葉より一つ古い葉である第5本葉の基部側より0-20mmに集積が見られ、またMgの要求性の高い組織を特定することができた。その他、さまざまなMg濃度で処理した場合の吸収特性を解析したので、発表したい。