抄録
イネ体内におけるカドミウム(Cd)の輸送メカニズムの解明を目的とし、Cdの輸送経路を放射性核種109Cdを用いたイメージングにより解析した。第六本葉が抽出した直後の幼植物に109Cd(2MBq/10ml 0.1μM CdCl2)を15分間経根吸収させ、地上部へのCdの初期移行パターンの特徴を分析したところ、Cdは、抽出直後の第六本葉に優先的に移行することが示された。さらに、茎部切片のオートラジオグラフィから、第六本葉へ移行するCdは、他の葉を経由せず、根から直接輸送されると考えられた。また、他元素(32P、35S、45Ca)の吸収動態との比較から、Cdの葉への初期移行パターンはP、SよりもCaに類似していること、さらにCdは篩管流によって輸送されていることが示唆された。
そこで、茎部における輸送経路を組織レベルで解析するため、特定の一本の根からのみ109Cdを30分間吸収させ、直後に根と茎部間の組織の連続切片を作成し、109Cdのイメージング解析を行った。その結果、Cdは茎部に到達した後、速やかに篩管へ移行することが示唆された。また、茎内を上方へと輸送される間、葉に向かう小維管束にはほとんど分布せず、大部分が茎内の維管束に留まる傾向が示された。これらの結果から考察されるCdの輸送経路について発表する。