抄録
MCA1とMCA2は、シロイヌナズナにおいてCa2+取込みと機械刺激受容に関与する細胞膜タンパク質であり、互いにアミノ酸配列上で72.7 %の同一性がある。両タンパク質は、複数の推定上の膜貫通領域、N末端から順次機能未知のARPKドメイン、Ca2+が結合する構造であるEFハンドに似た領域、中心付近にコイルドコイル、C末端に動植物に広く存在するシステイン豊富なPLAC8モチーフを含む共通の構造上の特徴をもつ。MCA1とMCA2のCa2+取込みに重要な領域を特定するため、酵母発現系を用いてMCA1およびMCA2の部分削除変異体群を作製し、それらのCa2 +取込み活性を調べた。その結果、N末端から173アミノ酸残基までのタンパク質はCa2+取込み活性をもっていたが、この領域をもたないN末端欠損タンパク質は活性をもたなかった。173番目のアミノ酸残基までには推定上の膜貫通領域(TM1)が1つ存在する。そのヘリカルホイール表示において、親水性アミノ酸が一局に集中して存在することが分かった。そのうちの一つであるAsp21をAsnに置換した結果、MCA1D21Nの活性はなくなり、MCA2D21Nの活性は約半分に減少した。これらの結果はMCA1とMCAのN末端から173番目のアミノ酸残基があればCa2+取込み活性に必要十分であり、そこに存在するTM1がCa2+取込みに関与していることを示唆する。