抄録
H+-PPaseは高分子合成反応の副産物であるピロリン酸の加水分解に共役してH+を輸送するプロトンポンプである。若い植物組織では液胞膜タンパク質の約10%がH+-PPaseであり、V-ATPaseと共に液胞の酸性化に寄与している。一方、いくつかの組織免疫染色における報告では細胞膜における局在を示唆しており、いまだ議論の的になっている。
この問題を検証するため、我々はシロイヌナズナ液胞型H+-PPaseであるAtVHP1/AVP1の細胞質側ループにsGFPをつないだコンストラクトを複数作成し、own promoter下でWT及びvhp1株に発現させた。その結果、基質加水分解活性を完全に保持し、また密度分画により内在のH+-PPaseと同一のオルガネラに局在することが確認された。このVHP1-sGFPは液胞膜と共に、バルブ状構造と呼ばれる液胞のサブドメインに存在していることが明瞭に観察され、細胞膜には確認されなかった。組織レベルでは植物体全体に蛍光が認められたが、特に成長域の組織や維管束において強い蛍光と多数のバルブ状構造が見られた。またバルブ構造の数がVHP1-sGFPの発現レベルの違いにより強く影響されることを発見した。本発表ではH+-PPaseの生理的役割やバルブ構造の機能について議論したい。