日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナの重金属耐性に関わる新規の膜輸送体
*中西 洋一佐古 建志前島 正義
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p. 0262

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抄録
重金属は酵素蛋白質の補因子の金属イオンと置き換わるため、また活性酸素を発生する無機触媒として振る舞うため植物にとって有害である。植物は、様々なレベルで重金属ストレスに対処するが、細胞レベルでは細胞膜輸送体による重金属の細胞外への排出と、液胞膜輸送体による重金属の液胞への隔離・貯蔵が、細胞質の重金属濃度低減と耐性に大きく寄与している。しかし、重金属輸送を担う分子実体は不明なものも多い。そこで本研究では、重金属のうち研究例が少ないマンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)について膜輸送体分子の存在可能性を検討した。
先に我々が開発した膜輸送体遺伝子コレクション(Amethyst)を過剰発現する、シロイヌナズナ形質転換株約200種類を、上記の重金属を混合した寒天培地で栽培し、コントロール株と比べよく育つ4株を選抜した。過剰発現株4株をさらに解析した結果、1株はマンガンと亜鉛に対する耐性が向上し、3株はニッケルまたはカドミウムへの耐性が向上していた。耐性株がもつ過剰発現ベクターにタグされている膜輸送体遺伝子を解析したところ、CAX型対向輸送体遺伝子がタグされた株が1株、植物間で保存された機能未知膜輸送体遺伝子がタグされた株が3株あった。これらの遺伝子がコードする膜タンパク質は、上記の重金属の膜輸送することで植物細胞に耐性を付与している可能性がある。
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© 2011 日本植物生理学会
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