抄録
一般に植物は、外部環境の変化や強光、高温、低温や乾燥などの環境ストレスに対して、遺伝子やタンパク質の発現など、組織や器官レベルでの応答を示し、外部環境への順化やストレス耐性を獲得する。この植物の環境応答メカニズムを利用し、適切なストレスを植物に与えることで、薬剤を用いることなく、病原抵抗性を付与する栽培方法などの研究開発が行われている。一方、果実などの青果物の大部分は、保蔵中および流通中に病原微生物による貯蔵病害の被害を受けることが知られる。本研究では、イチゴ(Fragaria x ananassa cv. Candonga)果実の保蔵前UV照射と異なる温度での貯蔵の有効性を病原抵抗性関連遺伝子群および二次代謝物関連遺伝子群等の発現を指標にして調べた。具体的には、イチゴ果実の収穫後、低温貯蔵を行う前に様々な強度のUV照射を行い、1℃,5℃,10℃で貯蔵し、経時的にサンプリングして遺伝子発現を調べた。その結果、遺伝子発現がUV照射と低温貯蔵の組み合わせにより制御可能であることが分かった。これらの結果は、イチゴ果実の保蔵性を向上させる上で、UV照射と低温貯蔵の利用が有効であることを示している。