日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第52回日本植物生理学会年会要旨集
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大気中二酸化窒素の植物バイタリゼーション作用による細胞拡大機構の解析
*高橋 美佐坂本 敦塚谷 裕一森川 弘道
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p. 0266

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抄録
植物を環境基準濃度(50 ppb)の二窒素酸化物(NO2)を含む空気中で栽培すると、NO2を含まない空気中での栽培に比べ、植物の生育やバイオマス量および葉サイズがほぼ倍加する。このNO2の植物バイタリゼーション作用(Takahashi et al., New Phytol 168:149, 2005)は、シロイヌナズナを含め各種植物種で認められた。形態学的解析から、バイタリゼーションによるシロイヌナズナ葉サイズの増加は、細胞数の増加ではなく、細胞拡大に起因することが分かっている。細胞拡大の原因の一つとして核内倍加が知られている。本研究ではNO2による細胞拡大が核内倍加に因るか否かを研究した。
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana C24)を、NO2を含まない(<5 ppb)空気中で、22±0.3℃、相対湿度70±4%、人工照明下(40 μ mole photon m-2 s-1)、360 ppm CO2の条件下で1週間栽培した後、NO2を含む(50 ppb)[+NO2植物]または含まない(<5 ppb)[-NO2植物]空気中で4週間栽培した。第8葉を採取してフローサイトメトリーで倍数性レベルを調査した。その結果、+NO2植物と-NO2植物との間に倍数性レベルに差がなかった。故に、NO2バイタリゼーションによる細胞拡大は、核内倍加に因るものではないと結論された。
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© 2011 日本植物生理学会
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