抄録
我々は、好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcanus RKNが低温光条件(31 °C)への順化応答として細胞凝集することを報告している。この凝集はセルラーゼ処理で解消した。また、3つあるセルロース合成酵素様遺伝子(Tvtll0007, Tvtlr1795, Tvtlr1930-33)のうち、Tvtll0007の破壊でこの凝集は生じなくなった。今回、この凝集とセルロースおよびその合成酵素遺伝子の関係を明らかにするため、T. vulcanusでのセルロース定量法を確立し、セルロースの蓄積量を測定した。野生株の通常環境(45 °C)でのセルロース蓄積は約5 μg / 4 x 109 cells (細胞乾重量の約0.01 %に相当)だった。一方、低温光条件では24 hで約2倍に増加し、その後も細胞増殖に応じてそのレベルを保った。この蓄積は凝集よりやや先行していた。一方、細胞凝集が起こらないセルロース合成酵素の三重破壊株やTvtll0007破壊株でもセルロースの蓄積の誘導は起こらなかったが、Tvtlr1795やTvtlr1930-33破壊株では野生株と同様の蓄積が見られた。以上のことはTvtll0007がセルロース合成酵素遺伝子であり、そのセルロース合成が低温光条件での細胞凝集の主要な要因であることを示している。