抄録
植物は,細胞内の糖(C)および窒素(N)の相対量比(C/N)を感知し,それに応じて代謝や成長を調節する能力「C/N応答機構」を備えている.これにより,栄養条件や生育段階に応じてCとNを効率的に利用している.我々はC/N応答機構の解明を目指し,その関連分子としてシロイヌナズナから単離した,ユビキチンリガーゼATL31の機能解析を進めている.これまでの研究から,ATL31はユビキチン・プロテアソーム系において何らかのタンパク質の分解を調節することで,C/N応答を制御していることが示されている(Sato et al. Plant Journal, 60: 852, 2009).また,ATL31の相互作用タンパク質として同定された14-3-3は,ATL31を介してユビキチン化され分解されることが明らかとなった.14-3-3はリン酸化タンパク質に結合し,活性や細胞内局在など様々な分子機能を制御している.本研究では,ATL31と14-3-3の詳細な相互作用解析を実施した.BiFC法から,ATL31と14-3-3は細胞膜で相互作用することが示された.したがって,ATL31は14-3-3を分解に導くことで,その制御下にある細胞膜タンパク質の活性を変化させている可能性が示唆される.現在,ATL31による14-3-3分解の生理的機能についても解析を進めている.本発表ではこれらの解析結果を報告する.