抄録
Small Acidic Protein 1 (SMAP1)遺伝子は、アンチオーキシン抵抗性変異体aar1の原因遺伝子で、合成オーキシン2,4-Dの応答機構にも関わる因子として同定された遺伝子である。これまでの研究から、SMAP1は、2,4-D情報伝達系においてAUX/IAAタンパク質の分解より上流のステップで機能すると推定されている。また、SMAP1がシロイヌナズナ抽出液中でCOP9シグナロゾーム複合体(CSN)と結合していることが明らかにされている。そこで、今回、SMAP1とCSNとの関係について遺伝学的知見を得るために、aar1変異体とCSNのサブユニットCSN5Aの変異体csn5a-1を交配し、二重変異体の作出をおこなった。その結果、aar1-1 csn5a-1は、aar1-1およびcsn5a-1に比べ、胚軸が短く、根の生長も遅いなどの形態的特徴がみられた。根における2,4-D感受性も相対的に低下しており、生長した個体は著しくわい化していた。この特徴は、35S:SMAP1-GFPの導入で解消された。以上の結果より、aar1変異体はほとんど形態的な特徴や生長異常はみられないが、CSNが充分に機能しない状態では、SMAP1が植物の正常な生長に重要な役割を果たしていることが示唆された。