抄録
26Sプロテアソームは異常タンパク質の分解による品質管理、また、特定タンパク質の分解による分子スイッチとしての機能を担う。
シロイヌナズナの26Sプロテアソームサブユニット遺伝子の多くが重複して存在しているが、それぞれのパラログ分子が持つ機能はまだ明らかとなっていないものが多い。これまでの研究から、プロテアソームサブユニットパラログ欠損変異体が、環境ストレスに異なる応答を示すことを明らかとしており、サブユニットパラログ間での機能が異なることが示唆される。また、栄養ストレス条件に応じて、プロテアソームがもつ3つのペプチダーゼ活性が変化するということが報告されている。これらのことから、植物において、様々な環境ストレスに応じた「環境ストレス応答型」プロテアソームが存在し、機能していることが考えられる。そこで、各環境ストレス条件下におけるプロテアソームの構造・ペプチダーゼ活性の変化を明らかとすることで、植物の環境適応機構の解明を目指した。
そのために、プロテアソームのアフィニティー精製、および精製産物のMS解析によりサブユニットの同定系を確立した。更に、精製産物の二次元電気泳動によりパラログ分子の分離・同定に成功した。
現在、この実験系を用いて、各環境ストレス条件下でのプロテアソーム構造変換およびプロテアソーム活性の変化の解析を進めており、これについて報告する。