抄録
イネは、動物と同様に、3量体Gタンパク質α(Gα)、β(Gβ)、γ(Gγ)サブユニットを有する。イネGα遺伝子欠損変異体d1 は、WTと比べて各器官が矮化する。昨年までに、d1の矮化の原因は細胞数の減少であることを明らかにした。つまり、Gαは細胞数を正に制御する因子と考えられた。幼苗期のWTとd1 に、7つの植物ホルモンを投与したところ、d1 はブラシノライド(24-epi BL)に対する応答が低下していた。一方、ブラシノステロイド(BR)受容体は、細胞数と細胞長を正に制御すると考えられている。本年度は、d1-1 とd61-2(BR受容体変異体)との2重変異体を用いて、両シグナリングが、細胞数の制御に共通したパスウエイを利用しているか否かを検討した。
葉鞘において、d1-1d61-2 の組織長は相乗的に減少した。この結果は、両シグナリングは独立している可能性を示唆した。しかしながら、d1-1d61-2 の細胞数は、d1-1 と同じであった。この結果は、葉鞘の細胞数の制御に関しては、d1-1 はd61-2 の下流に位置することを示した。現在、節間、外頴に関しても、細胞数に関して、同様の上位性が認められるか否かの解析を進めている。