抄録
RGSV(Rice grassy stunt virus)の病徴は宿主が異常に多くの分げつを示すことである。植物の分げつは、頂芽優勢の破壊によって起こり、側芽の形成と側芽の伸長の2つのプロセスに分かれることが知られている。前者に関係する転写因子群(MOC1, RAX, REV, LAX等)の関与が明らかにされ、後者にはauxinとその輸送系、ストリゴラクトン(SL)、サイトカイニン、ジベレリンが正や負の関連を持っていることが知られている。RGSV感染時の宿主遺伝子応答を解析したところ、SLの合成系は抑制、GAの不活化(GAoxidase)の発現上昇が見られ、それ以外の関連遺伝子群の発現には顕著な変化が見られなかった。他のウイルス感染でもGA合成、不活化系の変化は観察されているがSLとGAが同時に起こっているのはRGSV感染時のみであった。次にRDV(Rice dwarf virus)の強中弱(S, D-84, O)系統の感染による表現系と宿主遺伝子応答の関係について解析した。RDVの病徴は萎縮であり、特に細胞壁合成系の遺伝子群等の発現抑制が見られるが、JAを介した防御系の応答が活発に誘導されている。RDV感染を妨げる宿主側の変異としてrim1-1変異が見いだされ、その宿主側での機能も解析されているが今回はウイルス感染応答の解析から見えてきたRIM1遺伝子の機能についても発表する。