抄録
我々は、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)を利用して、病害抵抗性遺伝子(R遺伝子)の機能について解析することを目指している。P. patensから見出されたPpC24遺伝子(Akita and Valkonen 2002)は、TIR-NBS-LRR型R遺伝子に特徴的なNBS(nucleotide binding site)の相同領域をもつ。このNBS上流にはToll and interleukin-1receptor like domain (TIR)は存在せず、kinaseと推定される領域が認められるが、下流のDNA配列には、R遺伝子のleucine rich repeat(LRR)との相同性を有する約1950bpのORFが観察される。これまでNBS下流の転写物は明らかでなかったが、本研究から、オルタナティブスプライシングによりその転写産物が少なくとも3種類存在するとわかった。推定kinase領域からの長い転写産物が複数種生成されていると予想されるが、NBS-LRR間にストップコドンが観察されることから、さらに検討が必要である。このKinase-NBS-LRRと相同的な配列は、P. patensゲノム上にPpC24を含めて少なくとも4箇所見られた。PpC24遺伝子のkinase領域のノックアウト株を作出したところ、形態的には野生型と変化なかった。